Last Update:15/01/03


 
   ■こうち県議会だより 第53号(H24.6.17発行) [PDFファイル版/4.89MB]
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1.永国寺キャンパス整備について
  (1-1)知の拠点・永国寺キャンパスについて
  (1-2)産学官連携窓口について
  (1-3)組織の連携を進めるための工夫などについて
  (1-4)連携の核となる環境について
2.高知をフィールドとした大学研究への支援について
  (2-1)県外大学と県内大学の単位互換提携について
  (2-2)調査拠点のハード整備について
  (2-3)大学生への交通費補助について
3.南海地震における、避難者受入れに関する整備について
  (3-1)中山間地域のための新たな住宅改修支援制度について
  (3-2)自主防災組織への支援について
  (3-3)地震発生時の医療機関の体制と備えについて
4.中学生用キャリア教育副読本の意義について

◆依光委員 おはようございます。依光晃一郎でございます。早速質問させていただきます。
 6月の初質問で、私は尾崎知事の産業振興計画についてすぐれた点を3つ上げさせていただきました。1つ目は、産業振興について重点分野を絞ったこと、2つ目に、産業間の連携に意欲的に取り組んだこと、3つ目に、多くの県民に参加を促したことの3つであります。まず最初に、産業間の連携についてお聞きをいたします。私が考える産業間の連携が、なぜ必要かということですが、要するに高知県の最大の課題である雇用創出という点で最も効果があると考えるからです。雇用を生み出すのは企業なわけですが、企業が雇用をつくるためには売れる商品を多く生み出さねばなりません。商品が売れて収入が上がってこそ、初めて雇用が生まれるのですから、雇用をつくるには、さらにどうやって売れる商品をつくるかということになります。
 高知にある素材、技術から新たな商品をつくって、地域に雇用をつくる。言葉にすれば簡単ですが、過去の高知県ではこのことが不十分であったため、これまで製造品出荷額や県民所得が下がり続けたのではと思います。産業間の連携による商品開発のイメージは、高知にある既存技術を幾つか組み合わせて今までになかったものをつくり出したり、今あるものの売り方、ネーミング、パッケージ、売り先を変えること、つまり組み合わせによる新しい価値の創造です。
 私は、まだまだ連携ができていないと考えていますが、この点に関しては、産学官連携会議があるし、産業振興センターの農商工連携事業もあるし、さらには、ものづくり地産地消センターの実績も相当上がってきており、連携は十分できているという御意見があるかもしれません。しかし、私の言う連携は、これまで以上の広い輪をつくる連携という意味で、これまで余り意識されていなかった主体も参加する連携です。例えば、水産加工の分野や防災の分野で期待される連携の相手は、漁師さんや漁協の方々、防災設備・商品を発注、あるいは使う側である国、県や市町村なども含みます。こういった主体のニーズや意見を、いかに商品開発に取り入れていけるかが、商品が売れるか売れないかということに大きくかかわってくるのではと思います。  次に、連携という言葉のイメージですが、産業界の使う連携と行政の方が使う連携は違っていると思います。簡単に言えば、連携とは、人と人との信頼関係のことであると私は思います。情報交換をする会議の場だけでは決してありません。6月14、15日と、産学連携学会の第10回大会が高知県で開催されますが、土佐経済同友会が中心となって6月16日に高知版INSをつくろうという動きがスタートしています。INSというのは、岩手ネットワークシステムの略で、岩手大学が音頭をとって実施している連携の仕組みのことで、発足以来20年の歴史を有する1,000人規模の志ある個人のネットワークとして、全国的にも成功事例と知られています。  連携というのは、高知に限らず難しいのですが、INSでは雇用につながる成果を多数出しているのです。では、INSがなぜ人と人の信頼関係を生み出せるのか、実は宴席に秘密があるようです。INSの別名は、いつも飲んで騒ぐ会というのですが、企業、大学、行政が肩書なしで語り合っているのです。肩書なしということに関しては、一つの杯を目上目下関係なく回し合う土佐の献杯文化で高知には優位性があると思われます。実際に、民間企業同士の連携は、経営者レベルではどこにも負けない感じを受けます。しかし、企業経営者の多くは、同じ経営者のようには、大学教授や行政の方々に対して親近感を持てずにいるのが現状ではないでしょうか。長くなりましたが、産学官民の連携とは、信頼関係で人と人とを結ぶ必要があり、その仕組みづくりに先進事例のノウハウを学ばなければいけないと思っています。  では、高知の場合、宴席をつくればよいかという話ですが、実はうまくいきそうにありません。以前、こうち530クラブという組織が、高知市、高知大学、高知工科大学、高知商工会議所、高知県経営者協会、高知県産業振興センターの持ち回りで開催されていたのですが、平成17年にスタートし、19回続いて21年に終了しています。なぜ継続的な取り組みにならなかったのかというのは、いろいろな理由があると思いますが、改めて分析しなければなりません。個人的に思うのは、◯◯さんがやっている会にはおれは参加しないという、主導権をとられるのは嫌、人と同じことをするのが嫌という、土佐人気質ではないかと思います。  高知県の場合に、最近成功した連携の事例で、私は「土佐のおきゃく」というものを参考にすべきと思っています。このイベントは、土佐経済同友会が発案で、高知に冬の祭りをというコンセプトで立ち上がりました。その手法は、これまであった南国土佐皿鉢祭などのいろいろなイベント、団体の独立性を担保した形で共存させ、外から見ると一つのイベントとして成立させたという事例です。そこで、企業、大学、公設研究機関、加えて1次産業生産者、流通業者等の当事者まで含む、これまで以上に広い輪の連携を大きな柱として、新しい商品開発のプラットホームともなる知の拠点、永国寺キャンパスでは、各組織の独立性を担保しつつ、信頼関係で結ばれた連携という、これまでだれもできなかった仕組み、組織を生み出していただきたいと思います。  改めて、知事の知の拠点、永国寺キャンパスへの意気込みをお聞きいたします。
◎尾崎知事 今、産学官連携の取り組み、随時、だんだんだんだん拡大をしていっているところでございますが、ぜひその広がりというのをもっともっと広げていければと、そのように思っています。産学官連携強化の取り組み、今、まず行っておること3つについて具体的に申し上げれば、1つは、大学と企業との共同研究を促進するために具体的なテーマを3つ上げて、共同研究、共同産業開発をやろうとしているということがあります。さらには、新たな産業人材育成プログラムの構築というのを行っていて、総合的な学習プログラムというのをつくっていこうとしています。そして3つ目に、さらに産業の発展を期して、防災、新エネルギー、食品、この3つを研究テーマとして、産学官連携会議のもとに3つの分科会を設けて、より長期的な視点での産業開発に取り組もうとか、そういう取り組みをしておるわけでございます。  これらは、いずれも知の拠点、永国寺キャンパスでこれから主体的に行われていくことになろうかと思いますが、御指摘のような、より広い形での、いろんなものを生み出していける、新しい形を生み出していけるようなプラットホームとなるような、そういう広がりというものにぜひ発展さしていければなと、そのように思うわけでありまして、高知版INSの取り組みとか非常に期待をしています。そこで出てきたアイデアとか、ぜひ産業振興計画なんかをうまく使い倒していただいて、そのアイデアを形にするようなものになっていければなと、そのように考えておるところでございます。そういう一連の取り組みを、さらに広げてプラットホームなようなものにしていく。さらにはもう一つ、ぜひ産業人材の育成に向けて、幅広い形での人材育成プログラムの拠点にもなっていくようなもの、そういうものをぜひ目指していければなと、そのように考えています。 ◆依光委員 さて、ここからは、具体的なハード整備に関するポイントをお聞きしたいと思います。企業、大学、公設研究機関が高知県内にばらばらにあるが、地域貢献と雇用をつくり出す商品開発を目指し、これらをもっと連携させるためにも永国寺キャンパスに共通の窓口をつくると県は表明しているわけですが、どの大学、どの行政機関、どの公設研究機関の窓口が入るのか、県の計画を知事にお聞きいたします。 ◎尾崎知事 県の計画というお話でございますけれども、私、この全体としての共通の窓口をつくっていきたいという話、前回の選挙戦のときに公約として掲げさしていただいてまいりました。今、先ほど来申し上げておりますような形で、だんだんだんだん産学官連携の取り組みというのが強化をされてきておるところですが、さらにもう一段、総合的な産学官連携、いろんな方々の窓口となるような総合窓口のあり方について、これから検討を進めていきたいと考えているところでございます。いろんな部局も連携して検討していかなければならない課題だというふうに思っていますので、私は、この平成24年度におきまして、この点について、一つの研究テーマとして考えていきたいと、そのように考えています。  実際のところ、永国寺キャンパスにいろいろな集積が行われようという機運が出ておるわけでありまして、委員御存じのとおり、高知工科大学は香美市から地域連携機能の一部を移転しようとしています。高知県立大学は新たに地域教育研究センターを立ち上げて、これを永国寺キャンパスで運用しようとしておるところでございます。また、官の関係でも、産業人材育成プログラムの推進、こういうものも今行っているところですが、いずれは拠点として永国寺キャンパスに持ってくることが考えられます。加えて、県内の高等教育機関、工業界、さまざまな企業や団体、工業技術センターなどの公設試験研究機関、さらには産業振興センター、こういう方々の力を結集しておいて、産学官連携の一つの共通窓口となるようなもの、そういうものができないかなと、そういうことを考えておるところであります。 ◆依光委員 その辺はしっかり取り組んでいただきたいと思います。  次に、私の考える永国寺キャンパスは、地域貢献する知の拠点として、県民がビジネスプランや地域活性のアイデアを持ち込んだ際に、産学官すべての知恵を享受できるワンストップの総合相談窓口と、今お答えいただいた主体の連携が有機的に進むようなフロア環境が必要だと思っております。どんなにすぐれた知の拠点を目指しても、組織同士の連携が密で人が自然と集まってくるような仕組みがなければ、知のコラボレーションは生まれません。他県の事例では、岩手大学の敷地にある盛岡市産学官連携研究センターや西条市のうちぬきサロンなど、また行ってみたいと思ってもらえるようオープンカフェのような交流サロンを設けるなど、空間づくりに知恵を絞っています。いろいろなフロア環境のアイデアがあると思いますが、例えば、私は文字どおり、組織の壁を取っ払ったワンフロアがよいのではと思っています。また、受付業務は専門の人を雇うのではなく、各組織が交代で行えば、受付業務を通じて各組織を知ることができ、自然と連携が進むと考えます。  県は、永国寺キャンパスのワンストップサービスにおいて、組織の連携が進む工夫と、多くの人がまた行きたいと思う空間づくりについてどんな工夫を考えているか、副知事のお考えをお聞きいたします。 ◎岩城副知事 永国寺キャンパスの産学官連携のワンストップサービス、その組織につきましては、先ほど知事からもお話ししたような形で検討してまいりますが、重要なのは、いかにして各部門それぞれが独立しておって、並列的にあるだけではだめですんで、その部門、各部門部門がいかに緊密に連携をしていって県民の皆様方、各企業の皆さん方の要望におこたえしていくか、そういう体制をつくっていくことが必要だというふうに考えております。今後、組織を検討していく上で、そうした機能、いかにしてコーディネート機能を持たしていくか、それと御提案のありましたように、広い輪での連携というものをどういう形でつくっていくかということを十分に検討していきたいというふうに考えております。あわせまして、そうした県民の皆さん方、各民間企業の皆さん方が御相談に来られます、そういう場となる施設の設計につきまして、皆さん方が気軽においでていただけるような開放的で環境にも配慮した、そういった施設にしていきたいというふうに考えております。 ◆依光委員 先ほどから長々とお話しさせていただいておりますが、信頼関係をつくるための連携であり、知的興奮、ビジネスアイデアのひらめきを誘発する仕組みという意味では、発表の場と宴席の場を兼ね備えたスペースの検討をお願いしたいと思います。先ほどお話しした岩手のINSでは、5分くらいのプレゼンテーションを十数人やった後に宴席というスタイルで、ビジネスのアイデアや商品開発の成果を出しています。高知であれば、パワーポイントなどの映像を映し出す設備はもちろんで、さらに食品加工業に力を入れているのですから、実際に食品加工の実演ということで、例えばわら焼きタタキやシャモなべの調理を見てもらうキッチンを備え、その後、食事をとりながら議論できるスペースがつくり出せないかと思います。  成功イメージですが、例えば我が香美市には、シカを使って食品加工をしているグループがあるのですが、シカのジビエ料理を題材に、フランス料理としてのメニュー、イタリア料理としてのメニューで調理し、参加者に試食し食べ比べしてもらう商品開発の取り組みができるのではと思います。その際に、高知大学医学部からはシカ肉の鉄分が多い性質から健康につながるアイデアを、高知県立大学健康栄養学部からは介護食に関するアイデアを、高知工科大学からはシカ肉加工の機械化のアイデアを、また産業振興センターからは販売戦略のアイデアをと、一堂に会してやれば、すぐれた商品が生まれやすくなると思います。  また、商品販売も見据えて、テストマーケティングとしての消費者の意見を聞くことや、次世代の地域を担う大学生に見てもらうという、人材育成の場にすることも考えられると思います。大学は、研究機関で難しいというならば、食堂の一角にプレゼンスペースを設けるという発想で設計してもらえればいいと思います。県外では、大学の食堂で酒を出しての披露宴というのも珍しいことではありません。  新商品発表に関するプレゼンテーションや商品開発のワークショップ等、交通の便のよい永国寺に産学官民連携の核となる共同発表、共同研究の環境を整える必要があると考えますが、文化生活部長にお聞きをいたします。 ◎大崎文化生活部長 永国寺キャンパスには、例えば広さも大小さまざまで、プレゼンテーション機能も備えた講義室なども整備しますし、実験室や会議室、食堂など、種々のスペースを整備することといたしております。永国寺キャンパスは、県民や地域の方々に開かれたキャンパスとして、広く県民の方々に開放する方針としておりますので、キャンパス内の施設を、お話にございましたような研究会やシンポジウム、ワークショップなどの場として、その目的や規模に合わせて積極的に活用していただきたいと考えております。そのための設計面や運用面での工夫を行ってまいりたいと考えております。 ◆依光委員 ここからは要請です。私が先ほどから質問させていただいている産学官連携のイメージには、3つの県庁組織がかかわっています。産業振興計画において、産業成長戦略、産業間連携の強化に関して議論を積み重ねてきた産業振興推進部、高知県産学官連携会議の所管である商工労働部、そして県が関与する大学を所管する文化生活部の3つです。産学官連携のためには、これから3つの部の緊密な連携が欠かせませんし、整備後の運営主体、運営方法の議論は大変難しい課題であると思います。実現のためには、総合調整のため、専任のプロジェクトチーム的なものも必要であると考えます。その際、私は、ことしから産業振興推進部長より副知事となった岩城副知事の手腕に大いに期待しますとともに、県庁内の連携のお手本として仕上げていただくことを要請いたします。  次に、高知県は永国寺キャンパスに設ける新たな社会科学系学部を、高知をフィールドにした地域の課題解決や地域づくりの教育研究、また先進分野の教育研究によって特色を出していくと表明されていますが、そのために必要な大学支援について質問させていただきます。県は昨年から、課題解決のための集落実態調査を行っていますが、集落にとっての課題は、担い手の話に尽きます。私は数年前から、中山間地域に大学生を送り込むインターンシップのお手伝いをしているのですが、担い手確保への希望という意味で手ごたえを感じております。  中山間集落に、大学生にインターンシップに行ってもらう場合、課題解決型と体験型があって、課題解決型の場合はそれなりの成功事例も出てきています。簡潔に事例を御紹介すると、中山間で犬小屋をつくって県外に販売していた事業者のところに大学生がインターンシップで入り、若い発想の企画をつくって販路拡大の一翼を担ったというような事例です。また、体験型においても、高齢化が進み、肉体的に大変なユズなどの収穫作業を大学生がお手伝いし、喜ばれたり、収穫した作物を高知市の日曜市で売る取り組みなども出てきています。大学生が入ったからといって、すぐに中山間集落の課題を解決できるほど甘くはありませんが、長期間継続して多くの学生が中山間地域に入ることには意味があります。地域への外部人材導入の際の呼び水効果、地域住民へのエネルギー補給効果などです。  集落に入ったIターン移住者が、地域に溶け込めず数年で都会に帰ってしまうということがありますが、見知らぬ大人が地域に入るより、大学生のほうがアレルギーは少なく、大学生を受け入れた地域の経験は過疎集落に移住者を受け入れるための準備になります。また、地域活性に前向きでなかった住民たちが、地域に入ってきた若い人材に接して一肌脱ごうという心意気が生まれ、新しいことをやってみようという活力が生まれてきたという事例もあります。経済的なアイデアとしては、大学のゼミ単位で集落で合宿をしてもらい、調査してもらうというものが考えられます。高知県観光コンベンション協会が、大学の体育会への合宿の働きかけを行っていますが、課題先進県である高知県で調査合宿を行ってもらう仕組みでも、同様の経済効果が生まれると考えられます。  そこで、私が提案したいのは、県外大学と高知県内大学との単位協定で、例えば早稲田大学と高知のどこかの大学が、早稲田大学建学に尽力した小野梓を縁に単位互換協定を結ぶ。その高知県の大学が集中講義を宿毛で準備し、早稲田の大学生に来てもらうというようなことは、十分に可能であると思います。また、秋入学の議論が最近出てきていますが、ギャップイヤーを中山間地域での体験学習にという仕組みづくりも、おもしろいのではと思います。  高知の中山間をフィールドとした大学研究室、ゼミの誘致を目指した県外大学との県内大学単位互換協定の推進について文化生活部長にお考えをお聞きいたします。 ◎大崎文化生活部長 単位互換は、学生の学習の幅を広げるとともに、学生間の交流を進めるために行われておりますが、大学間の密接な連携が必要なことや学生の通学の都合などから、一般的には、同一県内や近隣の大学間で行われることが多くなっております。一方で、高知県立大学、高知工科大学の両大学は、少子高齢化や過疎化などいずれ全国でも直面する課題を抱える高知県の高等教育機関として、県内の中山間地域などをフィールドに、地域の視点から教育研究を充実することといたしております。まずは、両大学が、このような分野の特色ある教育研究を充実させ、県外の大学との連携や交流を深めていただくことで、お話にございました中山間地域におけるゼミ合宿やインターンシップの誘致につなげていくこと、そして、さらには単位互換など大学間連携の充実につなげていくこと、これが重要じゃないかと考えております。 ◆依光委員 先日、嶺北地方に行きました際にも、関東の私立大学がもう既に入っているような県内事例もありますので、ぜひ取り組みを進めていただきたいと思います。  次に、調査拠点のハード整備についてお聞きをいたします。大学生が学習で集落に入る場合、宿泊所のおふろが問題になります。泊まることに関しては、集会所に布団を借りての寝泊まりが可能なのですが、多くの場合、おふろがありません。そこで、男女分かれてのおふろが不可欠となります。男女が分かれていないといけない理由は、そうでないと入浴時間が2倍かかるということで、学習時間を確保するために必要です。また、最近は模造紙に気づいたことを書き込むワークショップ的な授業が多いのですが、模造紙を持ち込むかわりに集会所の一室の壁を特殊な白の塗料で塗って、ホワイトボードがわりに壁に書き込めるようにするなどのアイデア、インターネット環境の整備などもあれば、他県に先駆けた集落学習拠点の先進的な整備になると思います。  過疎集落に大学生が入るための最低限の設備である入浴設備は、Iターン希望者のお試し居住や、いざというときの避難者受け入れのための設備としても利用が可能と思いますが、整備に関する補助金創設についてのお考えがないか、産業振興推進部長にお聞きをいたします。 ◎中澤産業振興推進部長 お話にございました大学生を初めとします若い世代の方々が、実際に中山間地域の集落に滞在をしていただいて、地域の歴史、あるいは文化、産業、暮らし、こういったことを学んでいただくことは、大変有意義なことだというふうに思っております。一方、これは受け入れ側の地域にとりましても、若い世代の方々と一緒になって、その考えだとかあるいは行動に触れる、そこに交流が生まれて語らいが生まれる。そんなことが地域の潜在力、あるいは活力を引き出すということにもつながるのではないかというふうに考えております。  このために、県では、都市にお住まいの方との交流事業、あるいは移住促進の取り組みに利用する施設の整備に関して、これまでも市町村に補助を行っております。既に、お話のような入浴施設を持つような施設というのは県内で多数整備をされておりますので、大学のフィールドワークにもこのような施設を活用していただきたいと思いますし、また今後、新たにこういった施設を整備しようとする場合にも、地域づくり支援事業費補助金、この補助金を活用して整備をしていただくことが可能となっております。 ◆依光委員 さらに、地域に大学生を出すという視点では、大学所有のバスが自由に使える仕組みも不可欠です。現状では、大学生が交通費を自腹で出しているため、中山間地域に行く回数がどうしても少なくなりがちです。もっと進んで提案すれば、県内大学の単位互換も一層進めて、キャンパスが離れた大学生同士がお金をかけずに各大学を行き来できる公共交通の利用方法やシャトルバスがあれば、所属大学の違う大学生が研究分野を持ち寄って、過疎集落の課題解決に取り組むということも考えられます。  今後、さらに少子化による大学淘汰が予想される中、過疎地域の課題解決を学べる高知ということで、県外から大学生を集める大きな特色にもなると思いますが、地域をフィールドとした学習活動に対する大学生への交通費補助について、産業振興推進部長にお考えをお聞きいたします。 ◎中澤産業振興推進部長 そうしたインターンシップの受け入れということを、県では積極的に進めておりまして、平成21年度からふるさとインターンシップ事業ということを立ち上げまして、受け入れに関してさまざまな支援をさしていただいているところでございます。来年度からは、これにさらに地域での暮らし体験実施事業ということで、大学生、もしくは大学生に限らず幅を広げていきたいなというふうに考えておるところでございます。  大学生が、こういった地域の学習活動に参加する場合、その交通費というのは、基本的には学びの主体であります学生さん本人に負担いただくことになりますけれども、これまでの例で言いますと、大学生の方に最寄りの公共交通機関のある駅まで来ていただいて、そこから先はその地域、市町村、あるいは地域支援企画員、そういった地元の人間が現地まで送迎をするといったような事例が、ほぼそういった対応がとられておりますし、それからそういったこと以外に、受け入れ側の地域で、大学生が滞在している間、食材の差し入れをしたりですとか、懇親会を開いてもてなしたりとかいったような対応をしておりますので、学生さんにとっては、お金にかえがたい貴重な経験、体験をしていただいているんではないかなというふうに思っております。  なお、来年度は、新たにこういった取り組み、県立大学との連携した取り組みとして、その地域で活動をされております団体、集落、こういったところが受け入れ先となりまして、大学生の方々に集落の活動、地域づくりの活動、体験をしていただくと。それを通じて人材の育成、あるいは地域の活性化を進めるモデル事業というのを実施したいというふうに考えておりまして、その際には学生さんの交通費、あるいは宿泊費の一部、これを支援するようにしたいと考えております。 ◆依光委員 この取り組みですけれども、今回質問ではないんですが、コーディネーターという方の力が重要だと思っています。といいますのは、地域の方と大学をつなぎ、ニーズとかいろんなことを調整する方というのがいる地域には大学生も入りやすいんですけれども、なかなかそういう方がいないと入りにくいということがあります。ですから、その点も踏まえて、今後政策を進めていただきたいと思います。  次に、南海地震対策についてお聞きをいたします。私の地元である香美市は、海に面していないため、津波への対策は考えていないわけですが、一方で、避難者がどっと押し寄せる人の波ということが言われ始めております。香美市では、南海地震が起これば、避難者を受け入れなければと行政だけでなく住民も準備を始めています。例えば、香美市土佐山田町の平山地区では、何かあったときに海辺の集落から避難してきてもらうことを想定して、大学教授を呼んでの勉強会をスタートさせています。その勉強会というのは、日ごろは、平山地区の農産物を買ってもらったり、農作業を手伝ってもらったりして、経済的なメリットを含めた交流をする。そして、いざというときには、顔見知りの地域に避難してもらう。また、賞味期限が短いがおいしくて食べやすいものを備蓄して、賞味期限前に交流と備蓄物資の更新を兼ねた合同訓練を行うという取り組みです。この取り組みは、都会と中山間地域をつなぐ取り組みであり、集落維持にも意義深いという感想を持っております。  現在の被害想定においても、少なくとも約2万戸の応急仮設住宅が必要となるものと聞いていますが、応急仮設住宅の必要戸数をなるべく少なくするためには、中山間地域の空き家などを改修して被災者を受け入れることができる住宅を確保し、平常時には都市部との交流拠点や移住希望者向けの住宅として活用すれば、中山間地域の活性化にもつながるのではないかと考えています。しかし、集落を回ってみると、立派な母屋、人が泊まれる離れがあっても、自分の代で終わりと家にお金を入れることはしないというのが現状であり、避難者を受け入れる意思があるかと問うと、避難者の食べ物を賄うだけのお金はないという答えが返ってきます。避難者を受け入れるための山と海の連携というのは、言うは簡単ですが行うはかたしで、受け入れ側の負担感を減らすとともに、災害時の被災者を受け入れるために、平常時から都市部と連携、交流をしておくことで地域が元気になるんだというモチベーションを与えなければ、進まないという感じがします。  そこで、被災者の受け入れと集落維持の基盤である住宅の維持との一石二鳥を目指し、地域の実情やニーズに合わせ、既存制度のパッケージ化も含めて、中山間地域のための新たな住宅改修支援制度ができないものかと考えていますが、土木部長のお考えをお聞きいたします。 ◎石井土木部長 既存の住宅などを利用いたしまして、被災者を受け入れることができる住宅を確保するということは、これは重要な視点であるというふうに思っております。中山間地域の空き家などを改修しまして、平常時には都市部との交流拠点、それから移住希望者向けの住宅として活用するということも考えられますので、そういったことは地域の活性化にも非常に有効なんではないかというふうに思っているところでございます。こういった観点を含んだ新たな住宅改修の支援制度、これにつきましても、地元に伺います出前講座などで地元のニーズを把握しながら、ソフト施策との連携も含めて勉強してまいりたいというふうに考えております。 ◆依光委員 部長のほうから、先ほど出前講座というようなお答えがあったんですけれども、非常に有効であると思っていまして、お金を入れる意思がない、家を直す意思がない方に直しますかと言っても、なかなか話が進まないというようなことがあります。ですから、積極的な姿勢を出していただくっていうのは、一つ重要でないかと思います。それと、中山間の家というのは、設計士さんが設計図どおりにつくったというよりは大工さんが墨を打って、こづくってつくっている家が多くて、技術を持った大工さんであったり、左官さんというのが今後減っていくので、改修にしても全面改修みたいなことになってしまいがちなんですが、今であれば部分修理というのができる人材もいますし、また地域のお金が回る仕組みもつくれると思いますんで、地元の大工さん、あるいは昔の職人さんなんかも活用できるような取り組みができないかと考えておりますので、その辺もまた御検討いただければと思います。  また、香美市の自主防災組織では、自分の地域住民だけではなく、都市部からの避難者を受け入れるための設備投資も議論が始まっています。地域外の人を受け入れるのであれば、県と受け入れ人数等の有事の際の協定書を結んだ上で、県のプラスアルファの補助金、例えば現状では支援対象外の井戸の手押しポンプ設置費用や水質検査の費用を出すということも考えていただきたいと思います。  地域外の避難者受け入れを想定した自主防災組織への設備支援についてのお考えを、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎森部危機管理部長 東日本大震災で起きましたように複数の市町村が同時に被災した場合、広域的な市町村間で支え合える仕組みづくりがどうしても必要だというふうに考えております。都市や中山間地域の自主防災組織が日ごろから交流、連携をしておくことは、特に発災後、避難した地域で安心した生活を送るためにも大変重要だと考えております。中山間地域での自主防災組織の設立の促進を図るとともに、今後整備が進められます集落活動センターなどを拠点とした日ごろの交流や、災害時にも地域間で支え合える仕組みづくりを検討し、避難者の受け入れを想定した地域の自主防災組織への設備などの支援について、市町村、また自主防災組織の御意見をお聞きしながら検討していきたいと考えております。 ◆依光委員 地元の事例で恐縮ですが、津波がないということで、香美市の場合は本当に対策について全く考えていないところと、受け入れも想定して、何をせんといかんということを一つ一つ積み重ねている地域の自主防災組織の2つに分かれています。その中で受け入れんといかんというところが、あえて自分たちが必要ない設備投資っていうのは、なかなかハードルが高い面もあって、その辺をちょっとお考えいただきたいという趣旨ですんで、また御検討をお願いしたいと思います。  また、地震時に救急対応できる病院がどれだけあるかわかりませんが、救急病院ではない病院に、負傷された多くの方々が殺到することも想定されるわけで、県外から医療チームが来てくれれば対応できるように、必要な医薬品や医療器材を事前に確保しておく取り組みも必要ではないかと考えますが、地震発生時の医療機関の体制と備えについてのお考えを、健康政策部長にお聞きをいたします。 ◎入福健康政策部長 地震などの災害時の医療救護は、被災地で傷病者の応急処置に当たります医療救護所と、重症患者等の収容と治療に当たる救護病院を市町村が指定して行うこととなっております。さらに、救護病院では対応が困難な重症患者の収容と治療は、県が指定をします災害拠点病院が行うこととなっておりまして、現在の指定状況は、医療救護所が80カ所、救護病院が52カ所、災害拠点病院が10カ所となっております。  このような、あらかじめ役割を定められている医療機関のほか、県内外から災害派遣医療チーム、いわゆるDMATを初めといたしますさまざまな支援チームによりまして医療救護活動を行うこととなりますけれども、こうした活動の基本となります災害時医療救護計画の見直しを、本年度行ったところでございます。これらの活動に必要となります医薬品や医療材料は、歯科の医療分も含めまして、本年度に2,700万円余りの経費で県が購入いたしまして、県内28カ所の医療機関が通常の取扱量に上乗せして備蓄、在庫いたします流通備蓄という手法を用いまして保管をしていただくということになっておりまして、災害時には地域の医療機関の要請によって、そこから供給をするという体制をとることとしております。また、医薬品の卸の団体などと協定を結びまして、在庫の確保や早急な提供をいただくということについても手配を整えております。 ◆依光委員 先ほどから申し上げていますとおり、香美市は津波がないわけですから、人の波ということが、これから何とかせんといかんというところなんですけれども、重症患者の方であるとか、そういう方が香美市に、病院に殺到された場合に、非常に心もとない部分もありまして、そういうところも、どれだけの被害想定が出てくるのかわからない部分もありますので、そこもしっかり考えていただきたいと思います。  最後に、中学生用キャリア教育副読本についてお聞きをいたします。昨年6月に質問させていただいた際に、高知県から県外に進学した大学生のうち、高知県内企業に就職した学生の数は2割を切っているという御答弁がありました。私は、高知県企業の採用に十数年前よりかかわらさせていただいていますが、就職活動をしている大学生が高知県企業のことをほとんど知らないということに気がつきました。知らないから、当然採用試験も受けないわけであります。  考えてみますと、私自身も高知県企業はもとより、そもそも高知県にどういう歴史があり、どういった産業があるのかということを学んだ経験がないことに気づきました。何となく、高知は景気が悪い、都会で就職したほうがまし、高知には有名企業がない、こういったマイナスの情報があふれている気がします。今回の副読本は、このような現状に一石を投じる画期的な取り組みであると思います。また、中学生が高知県企業を生で体験したり、仕事をしている方にいろいろなことを聞くなどの取り組みも、より一層続けてやっていくことが必要であると思います。  今回の副読本の意義と子供たちが自信を持って高知県で働くために、教育現場として、より一層力を入れなければいけないと考えている点について教育長にお聞きをいたします。 ◎中澤教育長 まず、この副読本をつくろうとしたきっかけでございますけれども、小学生は大体市町村単位でその地域の産業や暮らしを学ぶというのが、小学校の授業でございます。ところが中学生以上になりますと、そうした教科がなくて、それも高知県全体を勉強する機会がございませんでした。実はこのことは、この県議会で御指摘をいただいたものでございます。御指摘をいただきまして、いやこれはいけないということになりまして、高知県全体のものを紹介する冊子をつくろうということになりました。その際に、義務教育である中学生の段階で、できればすべての中学生に勉強していただきたいということで、この中学生向けの副読本をつくろうということにしたものでございます。  この中学生用のキャリア教育の副読本ですけれども、郷土出身の著名人や郷土を代表する産業や観光、それから自然等について学習をしまして、郷土を愛する態度を育てますとともに、みずからの生き方について考えを深めまして、また、それぞれの志を持たせるというために作成をするものでございます。あわせまして、職場体験学習の充実ですとか、昨日、西内隆純委員にもお答えしましたように、高校生とその保護者の方々にも高知県の企業を紹介するなどしまして、郷土に対する関心や愛着を高めていきたい、このような全体の中での中学生の副読本を作成するということになったものでございます。 ◆依光委員 御丁寧な御答弁ありがとうございました。  教育長のお話にもありましたが、私は、中学生や高校生に高知県企業のことを知ってもらうことは、絶対に必要だと思っています。進学などで県外に出てしまって、いざ高知に帰ってきたいと思っても、高知県企業の知識がなければなかなか帰ってくることにはならないと思います。大学生になって、就職活動を始めてからでは遅いと思います。県内企業や教育関係の方々に教育長の評価をお聞きすると、やるべきことが明確でわかりやすい、リーダーシップを発揮する方との評価をお聞きしました。キャリアに関する取り組みは、テストの点を上げるというような数値にあらわれるものではないため、先生方にも親御さんにも理解されにくいのではと思いますが、期待の大きい取り組みですので、今後とも頑張っていただきたいと思います。また、企業関係者からは、成果が出るまでは、10年くらいは継続してやっていただきたいというような声もありましたので、お伝えしておきます。  最後に、今回の質問で連携という言葉にこだわった質問をさせていただきました。この連携という言葉ですが、これほど実態があやふやで便利な言葉はないなという感想を持っています。連携していますという言葉で、仕組みとしてできているかは、また別の話だと思いますので、今後とも着目して勉強させていただきたいと思います。  以上、通告させていただいておりました11問すべてお答えをいただきましたので、時間が少し余っておりますが、以上で一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)